NPO法人 火山洞窟学会【火山洞窟入洞と事故防止の心得】
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火山洞窟入洞と事故防止の心得
NPO法人火山洞窟学会
入洞についてのお願い
 火山洞窟は毎日崩壊を繰り返し、消滅の一途を辿っています (石灰洞は日々大きくなって増加の一途です) 。この火山洞窟を少しでも長く後世まで残すためにもお願いします。
  • 車で行く場合は、駐車スペースの関係から、ふもとの駐車場等で車の台数を調整し現地へ向かってください。
  • 洞窟は調査及び見学会などに限り入洞し、そのほか余興などの目的では入洞しないでください。
  • キャンプは決められた場所以外は禁止されています。
  • 洞窟内外では、食料の食べ残しや飲料物の空き瓶、使用した電池、タバコの吸殻などのゴミは持ち帰り、美化に心がけてください。なお、周辺で見かけた古いゴミなどの回収もお願いします。
  • 洞窟内外では、排泄禁止です。(携帯トイレや介護用パンツ等を代用してください。)
  • 洞窟内はもちろん、周辺の樹木、溶岩などへの落書きなどはしないでください。
  • 探検記念などのプレートや、記念の名刺などを放置したり、壁などにペンキなどで書き残す行為はしないでください。
  • 洞窟内での溶岩や氷などの破損及び移動はしないでください。
入洞の心得
  • 国有地、県有地に存在する洞窟に入洞するときは、管轄の林務事務所に入山申請(届出)をする。その他、管轄の教育委員会、消防署などにも計画書を提出する。
  • また人里離れた山奥の洞窟でも、土地には地権者がいます。洞口の地権者の許可を必ず得てから入洞する (断りなく入洞し、事故が発生した場合、それ以後入洞の許可が得られなくなる場合もあります) 。
  • 地域によっては猟友会が有害動物などの捕獲をすることがあり、獣と間違われて誤射される危険もある。必ず入山申請をするとき地域の情報を確認する。
  • ザイルを設置する場合、樹木などには不安定なものもあるので注意する。また、角の鋭い溶岩や、溶岩の溝などでザイルが擦れないようにする。泥の多い場所などではその下の溶岩にも注意をはらう。
  • 洞窟の竪穴、横穴に関係なく保険には必ず加入する。
  • 洞内の水没部には不用意に入いらない。
  • 洞窟活動の終了後は、その記録を各自所属団体の事務局に提出する。作成者も手元に残しておく。事務局では記録として保存する。
入洞に対する参考事項
  • 入洞の前には洞窟に詳しい団体に問い合わせ、その洞窟の特徴や危険度を把握してから入洞するか、場合によっては、その洞窟にくわしい経験者を同行することが望ましい。
  • 火山洞窟内部の溶岩は角が鋭利なものが多くあります。肌を露出しないよう服装に留意する。
洞窟調査、見学会の事故防止について
  • 洞窟での事故防止のためには、それなりの心構えと準備をしてください。
  • 団体のリーダが、まず参加者個々の洞窟活動に対する技量を把握し、無理の無い計画を立てる。ヘルメット、ライト、軍手、服装、靴、呼子などの基本的な装備に付いては、入洞開始前に確認、点検を行ってください。
  • 簡単な医薬品を携行する。また、ライトの予備電池にも配慮を怠らないでください(ライトは電池寿命の観点からLEDの使用が望ましい) 。
  • 洞窟内外での行動は滑落、転倒事故防止に留意し無理の無い活動を行ってください。なお、事故遭遇(他の団体も含む)時の備えとして、滑車、予備のラダー、ザイルなどを携行するよう留意してください。
調査、見学会終了後
  • 終了後は早めにその実施状況を書面にて自分の所属団体の事務局などに報告してください。なお、危険箇所の発見、洞窟標識の脱落などがあれば併せて報告してください。報告を受けた事務局は、火山洞窟学会にも連絡してください。情報を有効に利用してください。
洞窟事故発生の場合
  • 人命救助を優先するのは当然だが、早急に管轄する警察署、消防署に連絡し、その指示を仰ぐ。事故の状況によっては消防隊のレスキュー活動に協力して事故処理にあたってください。
  • 事故の報告書を作成し、管轄の林務事務所等に提出してください。
火山洞窟での事故事例と対策
 火山洞窟での事故は、溶岩の崩落、酸欠、転落など多岐にわたる。ここでは火山洞窟での事故の報告があったものを紹介します。洞窟に行かれる方々はこの事例を参考にされ、事故にあわないよう注意してください。
事故報告例1/火山島の洞窟での事故
 人工的洞窟は、落盤、崩壊事故が多く、次に多いのが酸欠と有毒ガスと続いていますが、火山島である硫黄島の洞窟における事故は、活動中の火山であるため硫化系の有毒ガスと酸欠に戦争中・後は死亡事故が多く発生した。
 私も硫黄島の飛行場内の竪穴で大変な危険を体験しました。幅2m、竪8mの竪穴に遭遇し、立正大学の学生が設置したラダーで下り始めて直ぐに異常を感じて、這い上がりましたので直ぐにサンプルを採集して検査したところ火山性のガスで硫化カルボナールというガスで、水に反応すると火傷をする場合もあるとのことでした。
 原因は、空気より重いので竪穴に沈滞していたらしいが、早く気が付いたお陰で事故を未然に防ぐことが出来ました。
 火山性や石灰岩性いずれであっても、竪穴や初めての横穴では注意力が、大勢の生命を救うことになるので、竪穴や行き止まりの洞窟には十二分に注意をしてもらいたいものです。
 富士山の洞窟では、本栖第一で滑落事故が一件ありました。行き止まりの洞窟に多くの人が入り、ローソクの火が細くなって急いで脱出したことがありますので、酸欠、落盤、滑落には十二分に注意して下さい。事故が発生しても救急隊の到着が遅れる洞窟では、自分たちの力でレスキューすることが基本ですから常に準備だけはしておくよう心がけてください。
(立原 弘 火山洞窟学会会長)
【対 策】
 通気の悪い竪穴の場合、ザイルなどで急激に降下をしない。特に、過去の入洞記録が無いとか、記録が少ない洞窟は要注意。また、少しでも異常を感じたら入洞しない。しかし、これは経験が浅い人にはとても難しいことである。横穴でも気流のない洞窟では酸欠や有毒ガスに対する注意が必要だ。防空壕などは、足場が良くて入りやすいものだ。そのため、安易に入って酸欠事故に遭う例が後を絶たない。
 今回の報告例は、洞窟経験の豊な会長であったから、事故を避けることができたのだろ。初心者だけでの竪穴は避けてほしい。また、横穴でも経験の豊かな方を伴うのがベストだ。
事故報告例2/竜渓洞入洞中における鳥取県西部地震との遭遇
 西暦2000年(平成12年)10月6日13時30分18秒、鳥取県米子市南方約20km(北緯35度16.4分、東経133度20.9分、深さ9km)を震源とするM7.3の地震が発生しました。この地震は後に鳥取県西部地震と命名されます。
 この折、私は単独で国指定天然記念物「竜渓洞」に入洞中で、洞口から20m付近で注意板の取り付け作業を行っておりました。
 震源地は竜渓洞より南東に30km離れており、当地で震度5弱を記録しております。
 年間200日以上入ることから普段着で、ヘルメットは着用しておらず、長靴を履いて、懐中電灯を使用しての作業でした。
 光量のほとんどない洞窟内ですから揺れは強く感じなかったのですが、地鳴りが激しく、三半規管がマヒし、立ってはいらなくなり、ほふく前進で洞口を目指しました。
 あと5mで洞口というところで、出入り口の一部天井が崩落し、すんでの所で下敷きになるところでした。
 普段から入りなれていることから、単独、普段着、ヘルメット未着用など反省すべき点は多いです。
 竜渓洞は入り口から30mの位置からでも洞口の明かりが見えますし、床もほぼフラットですから脱出のしやすさはありますが、もし観光客を連れて支洞に入っていたら無事に全員を誘導し外を出れたかどうか分かりません。
 地震後、一ヶ月は余震があることから行政と協議の上、全面的に入洞を禁止し、その後、洞内にポリ・カーボネイト性の中屋根を設置するなどの処置を行いました。
 溶岩洞窟は鍾乳洞に比べ、割れ目・亀裂が多いことから、地震に対しては特に弱いように思います。
 万全の装備、急な自然災害に対する連絡体制等、絶対に必要です。
(火山洞窟学会会員・島根県自然観察指導員 門脇和也)
【対 策】
 入洞回数の多い洞窟は安易に入洞しがちである。これが事故につながる場合があるので、入洞に際しては最悪の場合の対処方法も考えておく必要がある。ただ、洞窟内での地震の遭遇はそれほど在ることではないので、とても難しい問題である。と同時にとても貴重な体験とも言えるでしょう。ぜひ参考にしてほしい。
 私事ですが、40年ほど洞窟と接してきたが、洞窟内での地震体験は1度もない。ただ、洞窟内では「いま地震があったらどうなるのだろう」と考えることがある。特に、通り抜けが難しい狭い場所を通るときである。